2017年1月22日(日) TOWER RECORDS presents ザ・感謝祭2017新春@品川ステラボール

 タワーレコーズの各レーベルよりCDをリリースするアイドルが一堂に会するイベント。出演はT-Palette Records からNegicco / アップアップガールズ(仮) / GANG PARADE / アイドルネッサンス  / WHY@DOLL、yourthsource recordsからDevil ANTHEM. / 上月せれな、箱レコォズ から じゅじゅ / エレクトリックリボン / Hauptharmonie / KOTO / リナチックステイト、神塔から 神宿、PENGUIN DISCから ハコイリ♡ムスメ。およびアイルネとリリカルスクールのコラボによるリリカルネッサンス。合間に参加アイドルによる腕相撲大会も開催とあって12時の開園から終演が20時近くという長丁場。今回は珍しく友人と参加したこともあり適度に小休止を取りつつ、じゅじゅ、Devil ANTHEM.、エリボン、KOTO、リナチックステイト、ハコイリ♡ムスメ、WHY@DOLLまで7組を鑑賞。もう少しアクティブに参加してもよかったと思うのだがやや後方で遠巻きに見ているとファンの熱気が明らかに中心の一部とその辺縁では違うためコールのタイミングもよくわからず拍子を取る程度の一般人ノリに終始。

 全体の印象として横に広いフロアと明るいステージは後方でも見やすく巨大なスピーカーから出力される音響はボーカルとオケの分解もよく聞きやすかった。出だしのじゅじゅのようなラウドロック系の低音では振動を体で感じることもでき迫力は十分。以下個別の感想:

じゅじゅ:黒髪美少女3人組が修道女をイメージした露出のほとんどない黒い衣装に身を包みゴシックメタルをコンセプトに激しく歌い踊る。オタクがしょっぱなからリフトのやり放題なのでどうなることかと思ったが、その後の出演者では一度も見なかったため、ここのファンが武闘派なだけだった模様。さすがにレーベルからリリースされるだけあって歌唱力、ダンスともパフォーマンスはしっかりしていた。音楽的にはCANDY GO!GO!や妹分のアンダービースティに近い感じだがその上になんだか面倒くさいゴシックホラー的なコンセプトを奉じているようなので応援していく上でいろいろと面倒くさそうな雰囲気。見ていてあまり楽しそうでないのがにんともかんとも。

Devil ANTHEM.:直訳すると悪魔の凱歌、ということでじゅじゅに続いて面倒くさいおどろおどろしいコンセプトアイドルが登場するかと思いきや可愛らしい中学生程度の少女たち。衣装こそ悪魔の角のようなものをつけてはいるがポップなアイドルソングを一生懸命歌い踊る姿は普通の若年アイドルそのもの。当日の4~5曲程度で判断はできないがどこへ向かうのか今一つ方向性がよくわからない印象。

エレクトリックリボン:さすがのパフォーマンス。好きで聞きに行くだけあってやはり肌に合っているのか曲よし、歌よし、見栄えよし。正月明けのせいかワンマンの時よりもリーダーがやや大きく見えたのはステージが広いせいだったか。定番の乾杯スターライト、波音チューニング、アイラインなどを披露。キャッチーでポップな曲調に覚えやすくノリやすい振り、しっかり安定した歌唱力と一見さんにも入りやすい間口の広さはこの日の出演者でも随一。

KOTO/リナチックステイト:ソロ二人が続いて登場。リナさんは以前ハピくるのハッピーセットで見たことがあったが広いステージでも堂々としたパフォーマンス。KOTOちゃんは初めて見たが演奏の全力っぷりは他のグループアイドルとは一味違うところ。

ハコイリ♡ムスメ:80~90年代のアイドルをコンセプトにオリジナルやカバーに取り組むとの触れ込みだったが、実に正統派なつくり。二組で色違いのチェックの衣装にベレー帽といういでたちはまさに80年代のアイドル雑誌から抜け出したかのよう。女優を目指すメンバーが集結ということでビジュアル先行かと思われたがきれいにハモるコーラスを聞かせたりと歌唱力もそれなりにしっかりしていた。連れて行った友人は90年代初頭にリボンやクレアを経て制服向上委員会へと行きついた元コアなアイドルファンだけにこの正統的な佇まいには惹かれるものがあったそうだ。

WHY@DOLL:さすがの貫禄。華やかさはステージでも大いに映える。音楽的には東京女子流がどっぷりはまって大失敗した楽曲派の運営が好む80年代のコンテンポラリーミュージックくさい方向性。付点多めのリズムに7thや9thを多用した短調系和声進行の地味なメロディーの曲で、一言でいうと角松敏生崩れっぽいとても地雷臭の強いジャンル。しかしながら曲の地味さを補って余りある二人のアイドル性によりなかなか華のあるステージ。適度に入れる「みなさん一緒に」の煽りを真に受けて一緒に踊ってしまうと意外に難しい振り付けもできないなりに参加意識を刺激されて終わってみれば楽しかったという稀有な経験。パフォーマンスも素晴らしいけどいかにもガチ恋系のファンが多そうだなあという印象。

2017年1月9日(月祝)ねがいごと。新曲リリイベ@タワーレコード川崎店

 チッタでのベボガワンマンに続いて隣のチネチッタタワーレコード川崎店でのねがいごと。新曲「わたしがわたしが一番可愛い女の子」のリリースイベント。ベボガワンマン14:30頃終了、ねがいごと。リリイベ15時開始と絶妙なタイミングでの移動。

 会場の客席は圧巻。若者の多かったベボガのライブとは隔世の感。メンバーが小6と中一であることを考えるとどう見てもおじいちゃんと呼べる世代が主力。一部後方に30代くらいの若手がいたが、基本的には先日のレッポコの客層と被るシニア世代。ただしレッポコよりもカメラやスマホ撮影専従の人は少なく手拍子もパラパラと聞こえた他、老齢ながら前方で振りコピる猛者もいた。

 新曲「わたしがわたしが一番可愛い女の子」を含む4曲を披露するが結構、ポジションを目まぐるしく変えるフォーメーションダンス的な本格的な振り付けで狭いステージではやりにくそうな感じ。歌声は見事に子供の声でマイクを通さずない生声。かぶせではなかったと思う。こういう子どものアイドルグループではどういう理由からかわからないが必ず心ここにあらずというか私なんでここにいるの感を醸し出している子がいるものだが、この日は野尻さくらちゃん(愛称はさくにゃん)が何か不安を抱えているのか泣きそうな表情を浮かべる場面もあり気になった。つばきファクトリーのきしもんこと岸本ゆめのに似ているほか、キッズ加入食後の矢島舞美を彷彿とさせる雰囲気なのでこの子は化ける可能性大ですよとここでは強調しておきたい。

 リリイベで見たアイドルは気になるのでHPやTwitterをチェックしてみるのだが、運営の方針としてリプはおろかファボ(いいね)も禁止しているようだ。一切フィードバックがなくても多くの反応を得ているメンバーもいるので特に必要ないと考えているのか不明だが、人気下位メンバーの場合、書き込む人数が如実に減ってきてつぶやきに対して何も反応がない場合もあり痛々しい。フォロワーとして書き込んだ場合、せめて読まれているということがわかるようにファボ程度は許さないとフォロワー、メンバーともにモチベーション低下は避けられないのではないか。

ツイッターは今やマスメディアへのチャネルを持たない地下アイドルにとってファンを獲得・維持するためのライフラインといっても過言ではないコミュニケーションツールと化している。それだけに過去の炎上事例などから学習し予めツイッター運用上のガイドラインを定めている運営は多い。

 基本的にメンバーがJK以上の場合はファンの数によって対応を変えているように見える。定期的にコメントを入れるファンが一桁程度の場合は運営がある程度メンバーに裁量をゆだねリプまで解禁、一定数を超えて全員へのリプが物理的に不可能になると公平性の観点から一律リプ禁止、ファボOKというパターンが多いようだ。あらかじめこの方針をタレントのプロフイールなどで提示しておかないとタレントの気まぐれで特定のファンのみにリプライがあると反応をもらえないファンが心象を損ねてアンチ化する弊害さえ懸念されるため、最近新しく発足するアイドルのアカウントではリプはいくつまで、DMの返信は不可などの方針をプロフィールで明示している場合が多い。

 そのようなファンとの関係性を育む強力なマーケティングツールであるツイッターだが、ねがいごと。の場合はメンバーが小中学生であるだけに、また、先代のねがいごと(まるなし)がファンとつながるなどの不祥事を起こしている先例もあり運営側がファンコミュニケーションに際しかなり慎重になっている姿勢が伺える。ファンとのコミュニケーションについてはまた別の機会に考察してみたい。

2017年1月9日(月祝)ベボガ!(虹のコンキスタドール黄組)1stワンマンライブ「ベボガガ!〜エピソード2〜」@川崎CLUB CITTA

 ベボガのワンマンはファーストではないのだけれど虹コン黄組としては初というややこしい形。ベースボールガールズとしてはすでに一年前にやはり同じチッタで800人を集めている。本来であればある意味有名人であるぺろりん先生こと鹿目凛を擁するグループだけにさらなるステップアップを図りたいところだが、なにしろ昨年春に前プロデューサによる業務上横領発覚による突然の活動停止(MCでぺろりんより49日「しじゅうくにち」との発言あり)により1か月半以上活動が滞り、その後、現在の事務所であるpixivに移籍、虹コンファミリーとして再スタートという経緯を経ているため、まずは再びワンマンを昨年とそん色ない規模で開催できれば御の字という状況。メンバーも上演直前まで泣いていたと吐露するなど不安を隠せない様子ではあったが、開演後の会場の熱気にそのような危惧も払しょくされたに違いない。

 会場はサイドに張り出して花道を作った分フロアを削っているがほぼ満員。前方にはまだスペースがあったようだが後方は完全にパンパンで入れないため前方の客は詰めるように指示、ちなみに後程メンバーからはまったく逆の指示があり一旦後方に下がったのだが、会場から指摘を受けて慌てて取り消す一幕もあった。公式な収容人員は1300人とのことだが脇のスペースを削っていることと2階は家族など関係者席としていたことから実際の集客は1000人前後と推測される。

 セットリストには様々な思いが込められているとのことでメンバーの樋口彩(あやぱむ)のブログに詳しいのでそちらを参照。

ameblo.jp

ライブアイドルファンとしてはやはり客席のサイリウムの色分布やコールの統制度が気になるところ。握手会ではぺろりん先生の列とそれ以外のメンバー全員の列がほぼ同等と聞いていたので黄色一色かと思われたが、目分量では青(あやぱむ)が最多、次いで黄(ぺろりん)、この2色が大半で残りは赤(「ここたん」こと水沢心愛)、オレンジ(「ありり」こと三浜ありさ)、ピンク(「りかんぬ」こと葉月梨花)がそこそこ、紫(「みとちゃん」こと水戸しのぶ)がほとんどないように感じられた。判官贔屓の筆者はもちろん紫。ただ「ヒーローインタビュー」で筆者のいた下手花道にメンバーが来た際に間近で確認したあやぱむの鍛えられた腹筋と小柄な体から発するアイドル性には確かに惹かれるものがあると得心した。ぺろりんは逆にパフォーマンス中は気配を消すことが多くモーニング娘。時代の久住小春の姿と重なるところがあった。さすがに性格はあれほど破たんしてはいないだろうけど。そしてみとちゃん(紫)はみとちゃんだった。

 コールは定番のMIX基本3種(英和アイヌ)とホワホワ・オーイングのコンボこそ周囲含めて全体で対応できていたものの、メンバーの振りや歌詞に応じてイレギュラーに入る合いの手やオーイングの場合は局地的に発生しては埋もれていくこともないではなかったが、「この恋、弾丸ライナー」のカキーンというメンバーの掛け声に合わせて素振りを行う振りは2回目にはほぼ全員が対応できるようになっておりまさにコールの生成過程を目の当たりにする思いであり感動さえ覚えた。このようにファンによる自発的なフィードバックが会場から自然発生的に湧き上がった場合の一体感による高揚こそライブにおける演者と観客による価値共創の本質であろう。ちなみにチクセントミハイの唱えるフロー感覚は自身の心理エネルギーが100%ある事物に注がれる状態にあるときに得られる集中力と高揚した感覚と言われているが、ライブにはまさにフローが発生する下記の条件が整っている。

 1.自分の能力に対して適切な難易度のものに取り組んでいる

 2.対象への自己統制感がある

 3.直接的なフィードバックがある

 4.集中を妨げる外乱がシャットアウトされている

 ライブでは3.4.の条件は自明であるためフロー感覚へと至るために重要なのは1.「能力に対して適切な難易度」と2.「自己統制感」である。例えば今回のワンマンで唯一「ドラマよりもドラマティック」(以下「ドラドラ」)では口上(長い間奏などでファンの思いの文章を拍に合わせて叫ぶ技。スタンダードなものは「言いたいことがあるんだよ~」で始まる)が入るがさすがに知らなければこれを唱えることは不可能だ。またコールはあくまで自主的な行為という点が重要なのであり、1.の難易度と表裏一体にあり、その場で聞いてすぐに自ら発することのできるアクションであることが重要である。演者によっては曲の前に「この部分は~してほしい」などの要求を行う場合や演者自身が会場に向かって「オイ!オイ!」などと手を突き上げながら叫びオーイングを促す「煽り」を行うことがあるが、前説の興ざめなことは論外として「煽り」もまたやらされている感覚からは逃れられないため一定の満足感はあってもフローに至るのは困難だ。ちなみに口上は難易度が高いだけに自身で発することができれば高い充足感を得られるのではないかと推測する。2chのアイドル版ベボガ!スレで「ドラドラ」の変形MIXと口上を紹介していたので記載しておく。

 

ドラドラMIX:

 あーいっくぞー

 うりゃおい×4

 あーまだ行かない

 うりゃおい×4

 あーまだ行かない

 いついくの?いまでしょ!

 あージャージャー

 ファイボーワイパーファーマージャスパーホワイパークーパーイエスクレイパー

 

ドラドラ口上:

 変わらぬ愛が側にあり

 世界を彩る花達は

 凛と冬を耐え忍ぶ

 春には笑顔になれるから

 俺らと歩もう第2章

 夢見る舞台に行く道は

 ドラマなんかじゃないんだよ

 いつでも同じ夢を見て

 

 「この恋、弾丸ライナー」でアンコール前ラストを盛り上げた後、最前のオタクの先導によりやや長めのアンコールコールに続いてメンバー登壇。虹コン黄組としての再出発をうたった復帰後第一弾シングル「かちとばせ!栄光のレインボー」のc/wである「エピソード2U」では歌詞と復帰前後の自身の記憶や想いが交錯し泣き崩れて歌えないメンバーも。ラストのMCはそれぞれが想いを簡潔に伝える中、最年長で当日成人式を迎えるぺろりんがまとめられずぐだぐだになっていたのが印象的。サプライズとして当ライブのDVD発売、1stアルバムのリリース、復帰後セカンドシングル「ドラマよりもドラマティック」がフジ系アイドル番組「アイドリアル」の1月のedテーマに決定の発表があり、メンバーも語ったようにさらに上を目指していくにあたって明るい雰囲気の中で終わった。このクラスの会場で本当は活躍してほしいリンクSTAR’sが自爆気味に悪手を打って自ら停滞を招き当面上がり目が期待できない中、ベボガにはぜひ頑張ってほしいところだ。

 

セトリ(樋口彩ブログから)

SE

勝利の女神

②CHANCE

MC

③ベボガメドレー

1.手のなる方へ

2.リアルな獣を呼び覚ませ

3.不意打ちのラブリーキス

4.ヒーローインタビュー

5.泥だらけチャレンジャー

6.ココロ×クロスゲーム

VTR

④かちとばせ!栄光のレインボー

⑤トライアングル・ドリーマー

⑥純情涙カタルシス

⑦ドラマよりもドラマティック

MC

⑧同じ夢を見て

⑨この恋、弾丸ライナー

アンコール

⑩エピソード2U

2016年1月6日(金) 山口活性学園/レッツポコポコ リリイベ@タワレコ横浜/川崎

 山口活性学園

 タワレコ横浜ビブレでの新アルバムリリイベ。終盤の2曲に間に合う。ロコドルながらしっかりした楽曲。オケがよく鳴っていた。それなりにキャリアの長いグループのはずだがフレッシュさを失っていないことに驚く。昨日デビューしたてと聞いても違和感ないくらい。素朴さと全力感に好感。

レッツポコポコ
 たしか、ゆるめるモ!の妹分。新曲くらげくらげの衝撃のYoutubeライブビデオを見て以来これはいつか生で見なくてはとの感じていた。横浜ビブレからのリリイベ連チャンだが山活の全力感と対局にあるゆるゆる感が凄まじい。タレントの醸し出すなんとも言えない弛緩した雰囲気に加えひたすらカメラやスマホを構えコールも手拍子もない中淡々と演じるメンバーのメンタルがとにかく凄い。既存2曲に続いての新曲僕らの物語/くらげくらげコンボで無我の境地へ。レッポコ恐るべし。

指原莉乃の「逆転力」

 HKT48のメンバーでありながら支配人である指原莉乃の著書から経営者視点による彼女のアイドル観について考察する。本書の大半は指原氏のモーヲタっぷりや中学時代のいじめ体験や家族のサポートなどの自伝的エピソードの紹介に割かれており(アイドル自身による著書としては常道)氏のアイドル観はほぼ第五章「"みんなで勝つ"ための戦術 ―指原流プロデュース術」の下記の4つのポリシーに凝縮されている。

 ①同じ土俵では戦わない

 ②ファン目線で

 ③フックとなる話題をつくり全国に広げる

 ④センターを固定、打順を回す

 これを見てまず感じるのは指原氏のポジショニング派としての戦略観だ。経営学における戦略理論には二つの大きな潮流がある。マイケル・ポーターに代表されるポジショニング派、そしてジェイ・B・バーニーに代表される資源アフーローチ派である。ポーターは市場構造(Structure)企業行動(Conduct)業績(Performance)の有名なSCP理論を提唱し市場構造に適合した企業行動が利益(業績)を生み出すと主張する。市場における5つの脅威(いわゆるFive Forceで競合、代替品、新規参入、供給者、顧客の脅威を指す)に抗して最適な行動をとるために企業はコスト戦略、差別化戦略、集中化戦略の3つのどれかを選択し立ち位置を明確にしなければならないとしている。①「同じ土俵では戦わない」というポリシーはまさに差別化戦略そのものでありほかのアイドルと同じことはしないぞという明確な意思のもとでグループの方向性を定めている

 HKT48の属する48グループは基本的には常設劇場での公演を主要な活動とするライブパフォーマーである。そうした形態を含めたアイドルとしてのフォーマットやシステムをフランチャイズ化して福岡博多の地に展開したHKT48にとって興行上のライバルはLinQや橋本環奈のRev. from DVLということになりそうだが、これらのロコドルとの比較は生々しすぎるからか指原氏は同じ48Gのグループをを引き合いに出してHKTのポジションを確認している。総合的にパフォーマンスの高いAKB、キレのいいダンスに迫力あるSKEとパフォーマンスではこの二者が抜けていると分析し、一方でNMBはそのMCのおもしろさでは図抜けていると非パフォーマンス領域での能力に秀でていることを認識する。パフォーマンス、MCといった指標ではHKTは後手に回らざるを得ないとの自己認識を起点にして、ではHKTが他のグループに対して優位に立てるポジションは?と探す。そしてHKTのメンバーが若くはじけるような元気さにおいて三つの先輩グループが踏み込めない領域で戦えると自己の立ち位置を定義するのである。

 これは指原氏がファンとして再三言及するモーニング娘。を中心とするハロープロジェクトの諸グループが卓越したスキルによる最高のパフォーマンスを目指す方向性からリソースを重視する資源アプローチに依拠することを考えると大変興味深い。自身の憧れであるハロプロのようにはパフォーマンススキルを追及することはせず、あくまでもポジショニングで勝負するという冷徹な自己分析の痕跡がうかがえる。そうした立ち位置の認識のもと差別化という方向性を大前提として「元気を前面に」押し出して「セットリストを固定しない」などの施策を追及する。例えば多田愛佳による松本伊代のセンチメンタルジャーニーのカバーを織り込むなどのアイデアは他の48Gでは見られない一方で中高年のファンには懐かしく若年層には新鮮に感じられることを狙うなど単に奇を衒った内容に終わらないことも一方で考慮する。

 ②「ファン目線で」③「フックとなる話題をつくり全国に広げる」の二点ではマーケティングの観点から既存顧客の満足度を高めることと話題づくりにより新規顧客の獲得を狙う必要性について言及し④「センターを固定、打順を回す」では若年女子のメンバーをいかにマネジメントするかについて述べている。グループとしてのアイデンティティ形成のために顔としてのセンターを固定することの必要性を意識するとともに、一番人気の宮脇咲良をセンターにすると人気が宮脇に集中しグループとしてマイナスであるとのバランスを重視し児玉、田島、朝長からセンターを選抜する一方、その他のメンバーのモチベーション維持のために「打順を回す」との表現で全メンバーにチャンスを与えることで公正性を確保しているのである。

 本書では言及されていないが、そもそも指原氏自身はアイドルのコアコンピタンスはそもそも歌やダンスにはないとしており資源アプローチには懐疑的な立場を明らかにしている。2013年10月18日に放送された「笑っていいとも」において「アイドルに歌とダンスの練習は必要ない」と発言し物議を醸している。応援する「おじさん」の目線からはむしろ歌もダンスもできない子が一生懸命アイドルを演じることがいじらしさを感じさせ応援したいとの感情を刺激するのだ、との見方を示している。

www.youtube.com

 歌やダンスができないアイドルの方が可愛いとのアイドル観は自身ファンとして応援していた経験に基づくだけに傾聴に値する。氏が特に好きだったというモーニング娘。亀井絵里℃-ute萩原舞Berryz工房熊井友理奈を見るに亀井はどちらかというとスキルメンではあるが、みなエースやセンターではないという点で一貫しており、彼女がアイドルのスキルそのものではなく、逆にスキルのない女の子が高みに向かって努力する姿勢、あるいは思うように伸ばせない自分に思い悩む様を見せることに価値があると見ている点に注目したい。そのようなアイドルの生きざまに対してこそ(おじさんは)応援したいという感情を掻き立てられるということを熟知しているからこその発言であろう。これは彼女が中学生時代から跋扈していたという2ちゃんねるや現場での大人のファンとの交流から培われたアイドル観であり、アイドルファンの思考プロセスへに対する深い洞察によるものと理解する。

 48Gがアイドルビジネスに根付かせた接触による関係性構築についての言及がなかったのは残念であるが、現役のアイドルでありつつマネジメントに携わるメンバーが自らのアイドル観を吐露した文書として大変貴重な資料である。

2016年12月21日(水) エレクトリックリボン ワンマン@渋谷www

 パフォーマンス中にファンがステージのメンバー(といっても対象は一人)にテキーラを差し入れするという自由な舞台が身上のエレクトリックリボンのワンマンライブ。開演前からファンがテキーラで盛り上がるなどwwwのドリンク売り上げが普段の10倍とメンバーのerica嬢からのアナウンスがあったほどアルコールを浴びたファンとメンバーによる一体感がすごい。

 一階の客席奥の壁の横断幕の「好きなんだ」は一曲目のアイライン、サビの歌詞。演奏中、該当箇所に入る直前に最前のトップヲタが先導して後方壁の横断幕を指示し、「好きなんだ」の歌詞でヲタが一斉に絶叫しながら「好きなんだ」の横断幕に向かってケチャ。最高に高まる瞬間であった。その他「カンパイ☆スターライト」のカンパイの歌詞への合いの手でヲタがゆっくりと上から下に手を振り下ろしながら入れる「フーッ」というコールも楽しい。

 アルバム12曲を中心とする全13曲をノンストップで演じ切る迫力のステージ、そしてアンコールのMC後、3人のソロ、そして作曲者あーた氏を迎えてのアイラインと盛りだくさん、3時間のステージは圧巻。会場を満員にできずやや悔しそうなメンバーだが、その反省からか、センターを担える新メンバーを大々的に募集するとのアナウンスあり。昨今のライブを中心に活動するアイドル全般に集客力が落ちてきている状況を考えればそれほと悲観すべき状況ではないようにも思えるがなにしろセンターで即戦力を募集とのことなので新展開に期待したいところ。

 

セトリ(いしだいや氏のtweetより)

SE

1 アイライン

2 カンパイ☆スターライト

3 波音チューニング

4 そよ風のKISS

5 夜風の歌

6 Factory Of Love

7 クリームソーダ

8 steal me

9 夢見るコットンキャンディ

10 ブレードランナー

11 無敵ガール

12 星屑ハイランド

13 STAR TEAR

[アンコール]

14 ガーリーソング(nagisaソロ)

15 あなたにキッス(pippiソロ)

16 愛のアカシ(ericaソロ)

MC

[あーたさん登壇]

MC

17 アイライン(エリボンx あーたさんコラボ)

MC 18 カンパイ☆スターライト

 

以上アルバム順ノンストップ

2016年12月19日(月) ハッピーくるくる『ハッピーセット in 地球』@新宿Dues

 明日のライブで「絶滅」する地球人とのラスト対バン。二回目にしてラストとは残念至極だが三人組で一人欠けるとやはりモチベーションの維持が難しいのだろうか。

 今回はコラボ企画としてメイド衣装の地球人のもぐちゃん×ハピくるののちゃんの白チーム、JK制服の地球人さらさ×ハピくるきのこの赤チームによる紅白歌合戦を実施。先行チームJKによるBuonoの初恋サイダー(ひょっとして地下アイドルにカバーされる率No1?)とののもぐwithサングラス&運営乱入による三代目の流星。真面目にアイドルらしく場を盛り上げるチームJKに対しふざけ倒すののもぐながらオタクの拍手による判定で見事白チーム優勝。あまり嬉しくないキン肉マン肌パックをゲット。最後にクリスマス前らしく4人で歌った聖歌は何だったんだろう?落ち着きのないののもぐに対しまじめに歌おうとするチームJKの対比が印象的。

 本編は前半ハピくる、後半地球人でそれぞれ4曲ずつ。ハピくるの曲名がわからないのが相変わらずもどかしい。先日買った天地想像の2曲ではなかったので今回買ったCDとWebで次回は予習しておこう。天地想像はなかなかアンビエントに攻めてる雰囲気で普通のアイドルポップとは一線を画す感じなのだが、ライブで演奏する曲はオタクが普通に涌ける親しみやすいチューン。段差のないステージに小柄な二人、大柄なオタクという三重苦でなかなか二人の姿が見えないが客席で大盛り上がりする中ときたま垣間見える姿は愛くるしい。公式WebやTwitterのアイコンに使用されているイラストがメンバーの特徴をよく捉えていておちゃめなののちゃんにしっかりもののきのこというキャラが確立されている。Twitter上ではキャラに徹したメンバーのツイートに対してオタクが突っ込むという図式も定着しメンバーからのリプライはないもののファンの満足度は高そう。運営のイメージ戦略が見事にはまっていると思う。ただしこの二人があまりにもはまりすぎているので夏ごろからずっと募集中の新メンバー選出は進んでいないのか話題に上らない。

 そしておそらく今回で見納めの地球人。ディキシー風のDancing' shakin' on the earthで始まりアイリッシュな地球人のテーマ、カンフーアクションが入る中国風の二曲を熱演。オタクの熱気に押されて隣の人と肩を組んで右往左往してしまったがそれはそれでまた楽しい。曲の趣味もよいしメンバーもキャラ立ちしていてハピくるよりも年上なだけあって攻めまくるMCもおもしろい。もったいないと思ってしまうがいろいろ事情はあるのだろう。